2013年04月28日

お薬手帳、活用してますか?

こんにちは。今日はお薬手帳のお話です。
処方されたおくすりの名前や飲む量、回数などの記録(薬歴)を残すための手帳がお薬手帳です。最近は、かなり普及してきていますので、お薬を処方された方のほとんどは、病院あるいは薬局からもらっているのではないでしょうか。

ただ、それを上手く活用されていない方は、まだまだ多いように感じます。当クリニックに来られる初診の方でも、たくさんの薬をかかりつけ医などからもらっていながらもお薬手帳を置いてきてしまう方が少なくありません。face10
お薬手帳を持ってきてもらうことで、診察がよりスムーズに進み、また適切な治療にもつながります。お薬手帳をみることで、これまでどんな病気にかかってきたか、また現在の治療状況などを推測することが出来ます。
例えば、同じ高血圧の治療を受けている中でも、降圧剤の種類、量、単剤か複数の種類かなどを知ることで、高血圧の重症度が推測されます。特に脳卒中を心配して来られるような方に対しては、大変有用な情報となります。face01

治療に関しては、やはり現在服用している薬が分からないと、基本的には新たにお薬を追加することが出来ません。それは、一つは薬の相互作用の問題で、飲み合わせにより、今までの薬の効果を下げてしまったり、逆に強くしてしまうことも有りますし、新たな副作用の出現も起こりえます。また、まったく同じ成分の薬を出してしまうことも起こりかねません。折角、受診に来て頂いても、適切な治療を受けられないといったことにならないよう、初めての病院へ行くときは特に忘れないようにしましょうemoji01

もう一つお薬手帳をみせてもらう利点を挙げますと、重複処方の発見につながることがあるということです。
勿論、本来は有ってはならないことですが、実際には重複されてしまっていることが稀には有るのが事実です。
重複処方の一つの原因には、後発薬品(いわゆるジェネリック)の普及による薬品名の氾濫が挙げられます。全く同じ成分の薬の商品名が多いものでは十数種類あったりし、それらが同じ薬だとは調べないと分からないのが多くなってますので、調べるのを怠ってしまうと重複の危険が起こります。予防策として、一般名(有効成分の名称を基本にしたもの)も一緒に表記することが有りますが、一般名も使いなれた薬剤でないとピンと来ないものが多く、なかなか難しい問題です。
重複処方のもう一つの原因は、お薬手帳を忘れた時に他の病院から新たに処方された時です。お薬手帳を忘れた場合、恐らく多くの病院、薬局は家に帰ったら薬手帳に貼るように新しく処方されたリストを渡しているかと思いますが、その場合、患者様が言われた通りしっかりと貼っても、先ほど述べたように名称が違うと同じ薬とは気付きません。
少々重複処方の話が長くなってしまいましたが、そうした重複処方されたお薬手帳を第3者の医師や薬剤師が見ると気付くことが有りますので、少なくともダブって飲み続けるのを防ぐことは出来ます。

と、長々とお薬手帳を病院へ持っていく利点を書きましたが、医薬品利用センターが推奨する利用方法を転記します。
病院や医院、歯科医院、薬局に行ったときには、毎回、必ず医師・歯科医師や薬剤師に提出してくださいemoji02

・薬局で市販のおくすりを買った場合にも、記録してください。
・病院や薬局でおくすりの名前等を書いた説明書を渡された場合は、そのまま貼ってください。
・おくすりについて、わからないこと、困ったこと等があるときには、右下の空欄に記録しておきましょう。
・あなたからもらったおくすりの記録(薬歴)になりますので、大切に保管してください。



お薬手帳が、より重要視されるようになった一つのきっかけが東日本大震災です。東日本大震災でおくすり手帳が現場救急で大変有効だったと評価され、災害時の有用性がクローズアップされました。
それを受け、いち早く行動を起こしたのが、我が静岡県の薬剤師会です!県薬剤師会に県医師会、県歯科医師会が加わり、作成されたのが、こちら”防災型お薬手帳”です。




お薬情報だけでなく、災害時に役立つ内容が盛り込まれた内容になっており、また防水加工されている等の工夫もあり、なかなか良く出来ているかと思います。当クリニックでも現在はこのお薬手帳を使っております。私が配置医師となっている特別養護老人ホームに入所している方全員にも携帯してもらいました。
この”防災型お薬手帳”についての詳細は、こちらをご覧ください。
http://www.shizuyaku.or.jp/techo.html

今回はかなり長文になってしまいましたが、皆様、日頃より安全でより良い医療を受けられるよう、また万が一の時の備えとして、お薬手帳を上手く活用していきましょう!  

Posted by mizutani at 18:39Comments(2)ブログ

2013年04月14日

漢方薬にも副作用!

今回は、漢方のお話です。
私は漢方の専門医では有りませんが、漢方薬を処方することも珍しくはありません。漢方専門医が、漢方理論や漢方診療(舌を良く観察したりお腹を触ったりして、一人一人の体質を判断)を行った上で漢方を処方するのを”漢方治療”といいます。
一方、日本では専門医以外の西洋医でも、症状や訴えから漢方理論や漢方診療を行わずに、保険適応で漢方を処方することが出来ます。私が行っているのは後者で、”漢方薬治療”と呼ばれています。西洋薬では治療に難渋する時に、漢方薬を併用してみると思わぬ効果を発揮したり、良い西洋薬が思い当たらない時に、漢方を使ったりすると、漢方だけで治ってしまうということも多々あります。
最近では、漢方でも薬理作用が明確になってきているものや、科学的データも数多く報告されるようになっており、西洋医にとっても使いやすいものとなっており、西洋薬と漢方を組み合わせることによってより良い医療を提供できるのではと思っております。
さて、ただ一つ気を付けたいのは副作用です。一般的に良く聞くように、西洋薬に比較して、副作用の頻度は低く、副作用の程度も致死的なものは少なく、相対的に安全性は高いと思われます。漢方は、複数の”生薬”の組み合わせから作られますが、その選ばれた生薬に副作用・毒性が低いためかと言われています。
しかし、やはり副作用が無いわけでは有りませんので、”漢方だから安全・安心”とう決めつけは危険です。比較的頻度の多い副作用は、胃腸障害、発疹です。また見落とされると怖いのは、間質性肺炎や低カリウム血症などです。むくみ・動悸・血圧上昇なども要注意です。
私が最近割と多いなと印象を受けたのは、低カリウム血症です。高齢者の入居している施設で、”抑肝散”という漢方を長期に飲んでいた方で、血液検査をすると3人に低カリウム血症を認めました。やはり、漢方と言えども、副作用の出現には十分気を付けなければと改めて認識させられました。
少々難しい話になってしまいましたが、漢方薬を飲む方々にも漢方薬でも副作用は起こりうることを認識してもらうことで、より良い漢方薬治療が行えるのではと思う次第であります。

院長  

Posted by mizutani at 20:27Comments(4)ブログ